【ペーターズギャラリーコンペ2022審査結果のお知らせ】
ペーターズギャラリーコンペ2022にご応募頂いた皆様、今年もありがとうございました。
審査の結果をご報告します。
テーマ「人」。人物を題材にしたイラストレーショ
ン。
サイズ B3サイズまで。点数制限なし、画材自由。
審査員
有山達也(グラフィックデザイナー)
福井真一(イラストレーター)
【敬称略・五十音順】
応募作品の中から各審査員が上位3名を選出し、賞を
決定。
受賞者による作品展を当ギャラリーにて行ないます。
(2023年2月)
応募人数 249名
応募作品数 932点
審査結果
有山達也賞/長谷川一葉(東京都)
福井真一賞/四宮愛(東京都)
峰岸達賞/四宮愛(東京都)
有山達也賞次点/樋口樹人(栃木県) ヒラヤマメグミ(神奈川県)
福井真一賞次点/副島智也(東京都) Chigabee(東京都)
峰岸達賞次点/前田なんとか(埼玉県) もんくみこ(埼玉県)
※敬称略
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■審査を終えて各審査員の声と最終選考対象者
有山達也賞 長谷川一葉(はせがわ・ひとは)
僕の中では次点を含めた3人に差はありません。どれも甲乙つけがたい作品です。その中で新作を展示したときの期待感が一番大きかったのが長谷川さん。長谷川さんの描いた人たちは、ゆったりとしたカーヴで構成されています。このカーヴと量感のある人体に僕はシアワセを感じます。さらに大きなカーヴとボリュームを感じたいので展示のときにはB0くらいの大きな作品をお願いします。
有山達也賞次点 樋口樹人(ひぐち・きびと)
前回に引き続きまた選んでしまいました……。極私的な世界感です。しかしそれに相反するようにイラストレーションの要素も含んでいるところが憎い。バックに引いてある黄色やピンクの紙のセンスも普通は持ち得ない。いわゆるプロっぽくない魅力が満載されてる暴走列車です。いつか作品集を出したらいいと思います。
有山達也賞次点 ヒラヤマメグミ(ひらやま・めぐみ)
ヒラヤマさんの描く線は長谷川さんとはまた違った柔らかな線、そして少しの切なさを含んだ爽やかな居心地。アニメーションの世界へ行ってしまわない、イラストレーションの風が吹いています。シニカルさやエロティックさなど、さらに武器を身につけてこの世界を深く掘り下げていってもらいたいです。
有山達也さん総評
前回審査したのが2017年、あれから5年が経ってます。この5年は、生きていく上でいままでの5年とは比べものにならないくらいの変化や重みがあります。今回皆さんの絵を見てそれが表れていて、前回の審査のときも感じましたが、絵とイラストレーションの境界がさらに混沌としてきたように思います。声にならない叫びというか、内面がむき出しになった直接的な「絵」が多く見られました。血が流れていたり、暗くおどろおどろしい絵です。感受性の高い皆さんだからゆえだと思いますが、胸に重いものが残りました。これらの絵を否定するつもりは毛頭ありませんが、直接それを表現する前に自分の中で一度それを消化して、取り組んでもらいたいという思いもあります。この時代だからこそ、イラストレーションの役目を、役割を、一度立ち止まって皆さんなりに考えてみる機会にしてください。
有山達也さん最終選考
最終選考者…畠山モグ 角南有紀 堀口ティモコ くしだみさき 丸山礼華 (東京都)、長洲忠 名前ナツ 青山功 (神奈川県)、うしさん アコル(埼玉県)、えだかのん(千葉県)、松山美宣 稲見優卯子(茨城県)、くらげ(愛知県)、島川美和(兵庫県)
(有山達也さんの審査のながれ 1次審査→最終選考)
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福井真一賞 四宮愛(しのみや・あい)
子供の頃の自分に戻りたい女性がハイヒールを脱いで公園の遊具で遊んだり虫とり網で蝶を捕まえたりしているうちにだんだん子供の体になっていきます。顔はそれを想像している女性のままで想像世界のこちら側にいるリアリティーを持たせていて周囲の平面表現とのアンバランスも面白いです。体の形に魅力がありポーズも良く考えられています。彩度と明度を考えた色の選び方と構図も良いです。マスキングを使って各要素のテクスチャーを巧みに作り出しています。広い面の平筆の使い方にやや苦労しているようです。
福井真一賞次点 副島智也(そえじま・ともや)
1つのプロジェクトとして提出されているのが良かったです。これは大切なことです。海外のコンペではプロジェクトを説明する文章も提出するケースが多いからです。作品の中の特に顔が非常にうまく表現されています。アイデアよりも顔自体に惹かれました。スーツ姿の端正で真面目な顔が秀逸です。女性の顔も上手いです。柔らかなテクスチャーと日本人の顔がきれいにマッチしていて幅広いメディアで機能できそうです。モコモコヘアーのユーモアも個人的に好きです。
福井真一賞次点 Chigabee(ちがびー)
出品された数点のうちこの2点だけが良かったです。特に背後に団扇のある絵は顔が非常に良いです。伊東深水か鏑木清方の描く顔のようです。出品作全てがこのレベルであればchigabeeさんが1番です。体の形や手の表現も上手いです。下地のテクスチャーがやや荒いのが気になります。テクスチャーを細かくして全体にしっとり感が出てくればもっと良くなります。線の引き方とぼかしの技術をさらに習得して、日本人の「粋」を表現できるようになれば誰もこの人について来れなくなるでしょう。
福井真一さん総評
沢山の面白い作品を見ることができました。最終選考に残った人は絵に対する入れ込み度の高い人です。絵に打ち込んだ精神はそのまま絵に宿りそれが人を惹きつけます。イラストレーションの場合それが独自の伝え方によってメディア内で機能します。ですからありふれた伝え方をしなくてもいいのです。応募した人はみんな絵が好きで一生懸命描いていますのでそれだけでも嬉しい気持ちになりました。選ばれなかった人はがっかりしないでください。不完全な人間が自分勝手にジャッジしたに過ぎないのです。経験からすると絵を描き続けていてある時期に突然いろいろな事が解り始めます。自分が「描く人」になった瞬間です。それまではやめないでください。そこからが勝負なのです。もうひとつ大事な点があります。自分に才能があると思う人は個性を求める必要はありません。雪岱やワイエスがそうであったように淡々と素直に自分の絵を描き続けていれば良いのです。今回一次通過もしなかった人が次回入賞する可能性は十分あります。そういう場面を幾度も見てきました。10人中8人はあきらめます。あとの2人は自然に賞を得ます。
福井真一さん最終選考
最終選考者…吉田麻子(北海道)、笹川路子 畠山モグ 長谷香菜美 Kazz なおりん (東京都)、稲見優卯子 (茨城県)、中村菜月(静岡県)、谷口朋栄(愛媛県)、tAK′a′(三重県)、
(福井真一さん審査のながれ 1次審査→2次審査→3次審査→最終選考)
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峰岸達賞 四宮愛(しのみや・あい)
奇をてらわずに、ちょっと不思議な発想のちょっとヘンな絵を描きますね。ファンタジックでもあります。
色彩も描写力も申し分なし。
受賞者展に向けて
この調子でいっぱい描いてください。楽しみにしてます!
峰岸達賞次点 前田なんとか(まえだ・なんとか)
デフォルメされてないのにオリジナリティがあります。槇原敬之みたいなおにいさん、おもしろい。
新宿末広亭の建物を描くのに時間がずっとかかったと思うけれど、入口脇にちょこんと座ったおじさん、
哀愁があっていいね。
峰岸達賞次点 もんくみこ(もん・くみこ)
人物がテーマのコンペにこんな絵を出す大胆さ。ぼくはテーマを忘れ彼女のこのシンプルな作品に惹きつけ
られました。でも人物描いているんだよね、ちょこちょこと。これはこれで良しとしました。
峰岸達さんの総評
当然のことながら、レベルにばらつきはあったけれど、平均点は悪く無かったです。というか、かなり良かったです。
結果、最終選考に残った人が大勢になってしまいました。
募集の時のコメントに出品数は多い方が良い、と書いたけれど、多過ぎて却って減点になった人もいました。
未完のものが混じっていて、力不足が露呈してしまったのです。
峰岸達さん最終選考
最終選考者…山瀬尚子 倉本トルル すぎもりえり 金子なぎさ 渡辺由美 早川洋貴 坂本真由美 石津亜矢子 諸星朋子 邦子 笹川路子 古川じゅんこ 太田マリコ (東京都)、竹内薫 shocochiyo 小牧真子 やまもとようこ (神奈川県)、大塚章世 おきおよぐあじ アコル ふちのとみよ (埼玉県)、岸あずみ(千葉県)、宮城高子(山梨県)、橋本浩子 足立ゆうじ(愛知県)
(峰岸達さん審査のながれ 1次審査→2次審査→最終選考)
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PATER'S Gallery COMPETITION 2019年度受賞者展
2023年2月3日(金) - 2月15日(水) 開催予定
ペーターズギャラリー 12:00~19:00 木曜日定休
受賞作品の展示と、各審査員賞に選ばれた2名はあら
たに描き下ろした作品も展示します。
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審査員プロフィール
有山達也(グラフィックデザイナー)
1993年、アリヤマデザインストア設立。第35回講談社出版文化賞ブックデザイン賞受賞。ミームデザインスクール講師。「ku:nel」(マガジンハウ ス)、「つるとはな」(つるとはな社)などのアートディレクション、「一九七二」(坪内祐三/文藝春秋)、「それでも日本人は戦争を選んだ」(加藤陽子/ 朝日出版社)、「ギケイキ」(町田康/河出書房新社)などのブックデザインを手がける。著書に『装幀のなかの絵』(港の人)がある。
福井真一(イラストレーター)
NTT、資生堂、JR、三菱自動車 などの広告イラストレーションを担当。
88年イラストレーション誌ザ・チョイス年度賞・優秀賞。朝日広告賞。
F-SCHOOL OF ILLUSTRATION 主宰。
「福井真一 人物を描く」(美術出版社)
「福井スクールの新発想 たのしく描けるイラストのコツ27」(玄光社)
「みづゑBOOK2 イラストレーションドリル」(美術出版社)
1944年群馬県高崎市生まれ。青山学院大学中退。良き時代のセツ・モードセミナーで学ぶ。
20代の初めのころから仕事を始め、イラストレーター歴50数年。
1988年東京イラストレーターソサエティの結成に参加。長く理事、公募展審査員、展覧会委員長等を勤めるが、2017年退会。
1994年講談社出版文化賞さしえ賞受賞。
著作に「昭和少年図鑑」「私の昭和町」「PORTRAIT」等、共著に「芸人とコメディアンと」(絶賛発売中!)